お肌や健康
ニキビにオロナインすると、何が起こるか?
2021.12.22
誰もが抱えるコンプレックスや欠点。でもそれも捉え方次第で、バネとなり生きる原動力になったり、その人ならではのチャーミングポイントになったりもします。「コンプレックスと仲良く生きていくためには?」をテーマにした本連載。第1回目は、ニキビに関するお話。青春の悲劇は人生の喜劇になりうる、というお話です。
青春の悩みは、数年後、微笑ましい笑い話に変わることがよくある。例えば、ニキビ。中学高校時代、僕の顔はニキビだらけだった。中学2年生の春頃から1つ2つとぽつぽつニキビができ始め、夏頃にはもう顔を覆い尽くすほどに。あっという間に、思春期を暗く覆い尽くすコンプレックスができあがった。
高校に入るとますますニキビ肌はひどくなり、調子が悪い日は学校に行くのも嫌になった。「ちゃんと洗顔フォームで洗ってんの?」同級生の無邪気な一言にも傷ついた。そんなのとっくに使っている。1本300円のメンズ洗顔料なんてとっくに通りすぎ、今は1本900円くらいの薬用のものを使っている。もちろん「そんなにお金使ってるのにその肌?」と思われるのが嫌だから、口には出させなかったが。
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勇気を出して皮膚科にも行った。当時は1999年。まだ「男たるもの、ニキビなんかチマチマ気にするな!」という意識が残っていた時代。僕自身もそういう気持ちがあったので、クラスメイトにはバレないように行った。診察室に通された後、おじいちゃん先生は開口一番、言った。
「ありゃ〜、こりゃひどいな」
僕のニキビは、プロから見てもひどいのか。思春期の繊細な感受性には、そんな何気ないボヤキもいちいち刺さった。2度目は行かなかった。こんな直径数ミリの突起物に、一生に一度の青春のすべてが脅かされるのが、本当にうらめしかった。
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そんな鬱々としたある日、2つ上の高校3年生の姉があるアドバイスをくれた。
「オロナインがニキビに効くらしいよ」
当時、僕は姉をバカにしていた。ギャル雑誌を読み漁り、ルーズソックス&ミニスカ制服でキメていた姉を、大衆の典型のように感じていたのだ。だからこそ反射的に言い返した。
「何言ってんだよ!そんなの効くわけない!」
オロナインといえば、あかぎれとかヤケドの薬だろ?ニキビに効くわけない。そう頭の中で反芻しながら、姉のいるリビングから出ていった。
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気づくと僕は薬局にいた。そして、オロナイン売り場に直行。商品をつかみ取り、効能欄を見た。するとそこにはこう書かれていた。
「効能・効果:にきび、吹出物」
うわ、本当に効くのか。まさか、おばあちゃん家の常備薬のイメージしかなかった軟膏で、青春の悩みが解決するとは…。ひとすじの光が差し込んだ。
周囲を見渡し、知り合いがいないことを確認した後、僕は早足でレジに向かった。そして、店員さんに商品を差し出した。もちろん「いや、ニキビで悩んでるから買うんじゃないです!母親から家族用に買って来いと頼まれまして…」とか心の中で言い訳しながら。
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帰宅するやいなや僕は部屋に駆け込み、オロナインを開け、説明書を読んだ。
「ニキビ、吹出物には、軟膏を少量かるくすりこんでください。」
僕はその通り、ニキビに一つずつオロナインをつけていった。そして数分後、オロナインをつけ終わった自分の顔を鏡で見た。唖然とした。
真っ白だった。まさに能面。顔中に点在するニキビ一つひとつに白い軟膏をつけていった結果、顔全体が真っ白に覆われてしまったのだ。変わり果てた自分の顔にたじろく僕。しかし、すぐに思い直した。「まあ、つけたばかりだからだろう。しばらくしたら顔に馴染むさ」
数十分後。改めて鏡を見た。さらに驚愕した。確かにさっきより馴染んでいた。しかし、馴染んで透明になった結果、顔はテカテカになっていた。まるでサラダ油を顔に塗りたくったかのように。僕は愕然した。これはツルツル肌になるための通過儀礼なのか?ツルツルへのテカテカ。バカな。ただ一言確実に言えるのは、こんな顔、誰かに見られてはいけない。それがたとえ、家族であったとしても。とりあえずいったん洗顔して落ち着こう。そう思い直し、部屋から出ようとした時、不意に人影がよぎった。
姉である。これはマズイ。さっき「オロナインなんて効くわけない!」と啖呵切ったばかりなのに、このテカテカ顔ではオロナインを塗りたくったのが一目瞭然だ。絶対に顔を合わすわけにはいかない。とっさに下を向いて立ち去ろうとした瞬間だった。
なんと姉もテカテカだった。実は姉も僕と同じようにニキビで悩み、僕より先にオロナインユーザーだったのだ。これにはさすがに吹いた。姉も僕の顔を見て吹いた。テカテカのち、ガハハ。ニキビで暗かった毎日が、一瞬晴れた。ありがとう、オロナイン。
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それからというもの、毎日学校から帰ると洗顔し、オロナインを塗った。もちろん、僕だけでなく姉も。その効果かどうかわからないが、高2高3と進むに連れて、一進一退を繰り返しながら、少しずつニキビは減っていった(気がした)。学校に行きたくない日も減り、前向きな気持ちが徐々に戻っていった。
繰り返し言いたい。ありがとう、オロナイン。ありがとう、テカテカ姉弟に何も言わずに過ごしてくれた両親。
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内田 直樹
サンセリテ編集室ライター。群馬県生まれ東京都在住。趣味は競馬、読書(漫画70%書籍30%)、家飲み、PC周りのガジェット集めというインドア人間。好きな外出は犬の散歩くらい。それでも中年太りせずにいられるのは、「お腹が減るまで何も食べない」健康法のおかげ?最近、枕無しで寝るようにしたところ、寝違いや首痛から解放されつつあります。